令和元年 都市整備委員会(11月27日)

令和元年11月27日の都市整備委員会にて、質疑を行いました。

■マンション施策について

1.現状認識及び適正な管理の促進に関する条例を制定した背景

○菅野委員

 私からは、マンション施策について伺います。
 住宅政策本部の役割の一つに、長期的視点に立った分譲マンションの適正な維持管理の促進、そして円滑な再生を図る施策の推進があります。
 そこで、都内には分譲マンションが約百八十四万戸あるといわれています。しかし、そのうち約二十八万戸は建築をされてから四十年以上経過している。いわゆる老朽化ですね。そうしたことで、今後、建物の老朽化、また分譲当初からお住まいの方も大変多いところもあります。そういった意味で居住者の高齢化という、二つの老いが急速に進行している現状があるわけです。
 そこで、まず、マンションを取り巻く現状認識及びマンションの適正な管理の促進に関する条例を制定した背景を伺っておきたいと思います。

○栗谷川民間住宅施策推進担当部長

 東京において、マンションは、都民の主要な居住形態であるとともに、都市や地域社会を構成する要素として重要であり、地域のまちづくりやコミュニティとも密接に関連する社会性の高い住宅ストックでございます。
 一方で、建物の老朽化と居住者の高齢化の二つの老いが進行し、今後、管理組合の機能低下によって、管理不全に陥る可能性があり、一たびマンションが管理不全に陥れば、周辺環境にも深刻な影響を及ぼすおそれがございます。
 都はこれまで、管理組合の自主的な取り組みを後押しするため、マンション管理ガイドラインやセミナーなどの情報提供による普及啓発やアドバイザー派遣などの支援を実施しております。
 しかしながら、これらの施策は、区分所有者が管理に無関心で管理組合が機能していないようなマンションには届きにくいといった課題もあり、これまでよりも行政が積極的に関与するなどの、より踏み込んだ施策が必要でございます。
 このため、都は昨年、有識者による検討会を設置するなどにより、管理組合の機能強化に向けて鋭意検討を進め、都民を初め、区市町村や関係団体の意見を聞きながら、本年三月に、東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例を制定いたしました。

2.管理状況の届出制度に期待される効果

○菅野委員

 そうですね。いろんな委員から質問がありましたけれども、マンションの老朽化の建てかえであるとか、耐震化の促進など、非常に課題があるわけです。
 そうした課題の解決の中においては、このマンション管理の適正化というのはどうしてもついて離れない、これは一体のもので取り組まなければならないというところでありまして、そうした意味で、この早期対応をずっと主張してきた私にとっても、本条例については大いに期待をするところであります。
 そこで、この条例に基づき、来年四月から、管理状況の届け出制度が始まるというふうに聞いております。期待される効果を伺っておきたいと思います。

○栗谷川民間住宅施策推進担当部長

 届け出対象となるマンションは、昭和五十八年以前に新築された六戸以上のマンションとしており、これは、都内の分譲マンション約五万三千棟のうち、約一万四千棟に上ります。
 届け出内容として、管理組合や管理規約、大規模修繕の有無の項目等があり、これにより、管理不全の兆候を把握するとともに、防災や環境への取り組みなど、マンションの社会的機能の向上に資する取り組みに関しても状況を把握してまいります。
 届け出により把握した管理不全の兆候のあるマンションに対しては、管理状況に応じた助言やマンション管理士等の専門家の派遣などの支援を継続的に行うことで、管理不全の予防、改善につながる効果が得られます。
 また、届け出情報をもとに、管理組合と地域との連携による防災、防犯、美化、清掃活動などの取り組み事例の情報提供を行うなど、地域社会に貢献する管理組合の取り組みを後押しすることで、地域の安全・安心や居住環境の形成など、マンションの社会的機能の向上が期待されます。

3.未届けマンションへの対応について

○菅野委員

 私の住んでいます港区では、届け出義務の対象となるいわゆる古いマンションですね、老朽化マンション、これが約千棟あるといわれています。昭和五十八年以前のマンションが千棟あるといわれています。
 特にその高経年マンションにお住まいの方々からは、やはり高齢化に伴う管理組合の役員のなり手不足、そして、修繕積立金がやはり当初の予定でずっと積んでいったものがなかなかこう大幅に積み増しができなかったりして、大規模修繕がその間に何回かあって、不足しているといったさまざまな悩みを聞いています。
 このことで、行政がこれまでより踏み込んだ施策を実施することは大変重要だということで、本当にそれを強く感じています。
 また、マンションは、都民の主要な居住形態であるとともに、市街地の構成要素として、まちの活力や魅力、防災力の形成とも密接に関連するなど、地域のまちづくりやコミュニティ形成にとって重要な存在であります。都心など、私の港区だとかでは、住んでいる人の九割ぐらいの形態がマンションであります。
 このため、マンションの管理組合と地域の町会、自治会が連携して、防災や防犯、コミュニティ活動などの取り組みを進めていくことが重要であります。この届け出制度の開始を機に、ぜひ、こういった面も強力に進めてもらいたいと思います。
 そこで、この条例による届け出対象というのが、昭和五十八年以前に新築されたマンションとなっています。昭和五十八年に実は区分所有法が大きく改正があったということで、それまでは、このマンションの管理組合というものは明確に規定されていなかったわけであります。区分所有者とマンションの管理者というような立場の者を置いていればというような程度の記載であったと思います。
 そのため、この届け出制度が開始されても、管理組合が設立されていない、もしくは管理組合というのが名前だけあるんだけれども、実態としては組合の体をなしていない、または管理者そのものも存在していないマンションなども出てくることが想定されます。
 これらの、今いったようなマンションだったりですと、当然ですけれども事務作業能力もあんまりありませんので、こういった届け出すら出ないんじゃないか、そうした心配をしています。
 これら未届けマンションへの対応はどのように行っていくのか伺いたいと思います。

○栗谷川民間住宅施策推進担当部長

 届け出がなされないマンションにつきましては、適正な管理が行われていないことが懸念されることから、行政が直接粘り強くアプローチすることが必要でございます。
 管理組合がない、もしくは管理者が存在しないマンションに対しましては、個別訪問による調査を実施して、お住まいの方々に聞き取りを行うなど、ご協力いただける区分所有者を通じて届け出を行うよう求めてまいります。
 なお、届け出につなげた後、管理不全の兆候があるマンションに対しましては、マンション管理士の派遣により、管理組合の設立など適正な管理がなされていくよう、きめ細やかな支援を行ってまいります。

○菅野委員

 この届け出制度によって、まずは各マンションの状況を正確に把握をして、管理を適正に行うことを誘導して、さらには、耐震化、そして建てかえなどに結びつけていくことが極めて重要であります。
 その届け出制度の実施に当たっては、先ほど答弁があったように、個別訪問による調査など相当な手間や苦労があると思いますけれども、ぜひ都が積極的に区や市とも密接に連携をして進めてもらいたいと思います。
 しかし、何度も申し上げますけれども、実際にこの届け出が出なかった、または出てきた、そういったことで、どんどん出なかったところの調査を深めれば深めるほど、そうした実態がどんどんどんどん明らかになってくるわけであります。
 そうした明らかになる中で、今の進まない耐震化、老朽マンション建てかえもそうなんですが、やはり多くの課題がそこに見えてくるのかなと思います。
 そういった課題には、やはりいろんな方法で解決しなきゃいけない。しっかりとした管理組合を立ち上げることも必要かもしれませんし、もしくは老朽化に伴う建てかえを誘導することも必要かもしれない。管理組合をつくるにしても、今、実は管理会社も人手不足で、なかなかそういった、例えば非常に複雑になってしまった昔の形態の分譲マンションだとか、そういったものを、逆にいうとリスクが多かったり、余り利益にならなかったり、余り高い管理手数料は取れなかったりというようなことで、敬遠される嫌いもあります。
 ですから、管理士を派遣してアドバイスをするんですが、なかなか、またその先へ進めないということも実態として想定できますので、そうしたこともいずれあり得ると。そういう結果が出てくることで、対応しなきゃならない。どこまで行政が、何ができるのか、何を行政がするのかっていうことも含めて、今後の検討課題として取り組んでいただきたいなと思います。
 最後に、届け出制度をぜひ実効性のあるものとして、都民の豊かな住生活を支える安全で良質なマンションストックを形成していくことを期待して、私の質問を終わりたいと思います。

【都議会リポート】
https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/urban-development/2019-16.html