平成25年 経済・港湾委員会(3月18日)

経済・港湾委員会

平成二十六年三月十八日(火曜日)
第八委員会室

平成26年3月18日、経済・港湾委員会にて、
ものづくり企業グループ高度化支援事業、女性・若者・シニア創業サポート事業、子育てなどで離職した女性の再就職支援、映画やテレビドラマなどのロケ地を活用した観光振興(いわゆる「聖地巡礼」)について質問いたしました。


1.ものづくり企業グループ高度化支援事業について

〇菅野委員

 それでは、最初に、中小製造業グループによる取り組みに対する支援についてお伺いしたいと思います。
 先日の一般質問で、私は、都内で産業集積を確保することの重要性を訴えました。産業が集積するメリットの一つは、企業同士のネットワークが自然に形づくられ、お互いの発展のため、何か新しいことにチャレンジしようという取り組みが数多く生まれることにあります。
 中小企業が環境や医療などの成長分野への新規参入を図り、国内のみならず海外の需要も獲得できれば、飛躍的に発展することもできますが、ノウハウの蓄積に乏しい新たな事業分野で、中小企業がみずからの力だけでこれをなし遂げていくことは、並大抵のことではありません。
 それでも、個々の中小企業を見れば、都内には、超微細な加工技術やたくみのわざを引き継ぐへら絞りなど、世界に通用するすぐれた基盤技術を持つ企業が少なくありません。新たな製品開発に向けて、これらの企業がグループを組んで取り組めば、成長分野への参入を進める上で大変効果的であるといえます。
 都は来年度から、こうした取り組みを後押しするために、ものづくり企業グループ高度化支援事業を開始するとのことですが、この事業で具体的にどのような支援を実施していくのか、お伺いしたいと思います。

○十河商工部長

 来年度から開始するものづくり企業グループ高度化支援事業では、中小企業がグループを組んで医療や環境、エネルギーなどの成長分野へ参入する取り組みを対象に、製品の開発や事業化、そのための生産設備の充実から海外への販路開拓に至るまで、継続的な支援を行ってまいります。
 具体的には、新製品の開発に要する試作品の材料費や量産化のための計測機器、工作機器の購入費、これら設備を設置する工場の賃借料などを助成いたします。
 また、国内外への販路開拓に向けた市場調査、展示会への出展や海外特許権出願費用等も対象とし、これらについて、最長三年間で五千万円を限度に必要経費の二分の一を助成いたします。
 あわせて、専門家による継続的なアドバイスを行い、グループによる取り組みの円滑な推進を支援してまいります。
 これらによりまして、中小企業グループによる成長分野への参入や海外展開への取り組みを促進し、都内製造業の競争力を着実に強化してまいります。

〇菅野委員

 今ご答弁にありましたように、ぜひ中小企業グループの取り組みの円滑な推進に効果的な支援をお願いいたします。

■女性・若者・シニア創業サポート事業について

1.事業の概要について

〇菅野委員

 それでは、次の質問に移ります。
 さて、都内産業の活性化に向けては、高い意欲と志を持つ人々の創業を促進する必要があり、日本再興戦略でも開業率の飛躍的な向上を目標に掲げています。
 都議会自民党は、その有効な方策として、女性や若者、そしてシニア層に注目し、それぞれが持ち味を生かして地域社会で起業を行う場合の資金確保を強力に後押しする、新たな創業支援制度を立ち上げるよう強く求めました。
 都が来年度開始する女性・若者・シニア創業サポート事業は、我が党の要望に応えた、資金供給を中心とした新たな支援の枠組みであり、その意欲的な取り組みについて高く評価するものであります。
 本日の委員会では、本会議と予算特別委員会での質疑を掘り下げ、支援の具体的な仕組みについて伺っていきたいと思います。
 まず、新事業の概要とその特徴についてお伺いしたいと思います。

○寺崎金融部長

 本事業は、今後、創業の担い手として期待される女性や若者、シニア層を対象として、地域に根差した創業を数多く生み出すため、信用金庫や信用組合が、資金供給と経営サポートを組み合わせた新たな支援を行うものであります。
 都が、東京都信用金庫協会及び東京都信用組合協会に対して融資原資などを補助金として交付し、そのリスクを負担することで、信用金庫や信用組合が、有利な条件で創業資金を供給いたします。
 また、両協会が、創業支援の専門家による地域創業アドバイザーを新たに設置し、女性、若者、シニアの有する特性や、地域性、業態に応じた、きめ細やかな経営面からの支援を実施いたします。
 このように、本事業は、都からの補助金を活用し、協会が全体の調整役となりながら、信用金庫、信用組合、地域創業アドバイザーが相互に連携して、女性、若者、シニアの起業家を強力にサポートしていく点、資金供給と経営サポートを組み合わせて支援する点が特徴であり、今後十年間にわたって融資を実行するなど、長期的な視点から創業サポートを展開してまいります。

2.新事業における資金供給の枠組みについて

〇菅野委員

 創業者の多くは事業実績がなく、自己資金や担保も乏しいことから、金融機関からなかなか融資が受けにくいという現実があります。
 ご答弁にあったように、都が融資リスクを負担することで金融機関の背中を押してあげ、創業者への積極的な資金供給を促していくことは非常に大切だと考えますが、具体的にはどのような仕組みになるのでしょうか。新事業における資金供給の枠組みについてお伺いします。

○寺崎金融部長

 本事業では、都が、東京都信用金庫協会、東京都信用組合協会に対して融資原資などの資金を交付し、両協会は、これを原資として創業サポートのための基金を設置いたします。この基金から、事業に参加する信用金庫、信用組合に資金を供給し、各金融機関は、それぞれの地域で新たな事業に取り組む有望な女性、若者、シニアの創業者に対して積極的な融資を行います。
 融資条件につきましては、固定金利で利率一%以内、返済期間十年以内、最長三年までの据え置きを可能とするなど、特に創業初期の返済負担を極力抑えた有利な内容とする予定でございます。
 融資実行後、借り受け者からの返済が予定どおり進めば、その資金は、新たな創業者に対する融資原資として活用いたします。一方、創業者の努力にもかかわらず事業が軌道に乗らず、返済ができない場合には、各協会の審査により、金融機関が適切な債権管理を行っていることを条件として、各金融機関の融資実行額の五割までは基金への資金の返済を免除できる仕組みとしております。
 こうした仕組みにより、金融機関が積極的な資金供給を行える環境を整えることで、女性、若者、シニア層による数多くの創業を支援することといたします。

〇菅野委員

 信用金庫や信用組合の各協会に基金をつくり、積極的にリスクマネーを供給していく、いわば小口ファンドのようなものと理解いたしました。これは思い切った施策と思います。一方で、金融機関がモラルハザードを起こさないよう、都の負担を五割までとしている点もよく工夫されていると思います。

3.地域創業アドバイザーの具体的な活用について

〇菅野委員

 さて、この事業は、資金供給とともに経営面のサポートもあわせて提供するのが特徴とのことですが、特に起業間もない時期には、経営上の悩みや各種手続の知識不足などで足踏みする経営者が多いと聞いており、きめ細かなサポートが求められます。
 信用金庫、信用組合の中には、創業支援の実績が余りなく、自前の経営サポートだけでは不安だというところもあると思います。
 先ほどのご答弁にあったアドバイザーが鍵を握ると思いますが、新事業では、地域創業アドバイザーを具体的にどのように活用して創業者の経営をサポートしていくのか、お伺いしたいと思います。

○寺崎金融部長

 創業者は、資金調達はもちろん、事業計画の策定や販路開拓、ネットワークづくりなど、さまざまな経営上の課題に直面しております。こうした課題を解決するため、金融機関と連携協力して効果的な支援を行う役割を担うのが地域創業アドバイザーでございます。
 地域創業アドバイザーは、創業者一人一人のニーズに応じた適切なサポートが行えるよう、都内各地域での創業支援に豊富な経験と実績を有する団体や、女性、若者、シニア層それぞれに特化した支援を行っている団体など、二十団体程度をめどに幅広く選定する予定でございます。
 金融機関は、支援する創業者のニーズに合った適切なアドバイザーを選択し、きめ細かな支援を実施いたします。
 こうした創業アドバイザーの手配や創業者とのマッチングなどを円滑に行うため、創業アドバイザーの統括団体を一団体選定し、協会や金融機関との調整を行うとともに、創業セミナーを実施するなど、多面的な経営サポートを行ってまいります。

〇菅野委員

 効果的な支援を行うためには、しっかりとしたアドバイザーが欠かせません。ぜひ、地域の創業の活性化に理解と意欲のある適切な団体を選んでいただくようお願いをいたします。
 新たな事業の具体的な内容について伺ってきましたが、地域に根差した創業を支援していくことは、地域社会が直面するさまざまな課題の解決や地域の活性化にもつながる重要な取り組みだと思います。
 今回、都が創設する制度は、地域の実情に最も精通した信用金庫、そして信用組合が創業アドバイザーと連携して、地域社会に潜在的に眠る人材やアイデアをうまく引き出し、その起業を後押ししていくという画期的な取り組みであり、私も、本事業が大きな成果を上げることを期待しています。
 来年度は約十億円の予算が計上されていますが、しっかりした支援を継続していくためには、今後も引き続き予算を確保し、各協会の基金を積み増すことも必要だと思います。
 都は、本事業を効果的に運用し、創業の促進に向けて積極的に取り組んでいただくよう要望して、次の質問に移ります。

4.子育てなどで離職した女性の再就職支援について

〇菅野委員

 次に、女性の再就職支援について伺います。
 安倍政権では、女性の力を我が国最大の潜在力としております。女性の力を十分に発揮できるようにすることは、中小企業が人材を確保していく上で欠かせないものであり、社会全体の活力をもたらすことにもつながります。
 こうした認識のもと、我が党は、さきの代表質問で、子育てなどで離職した女性の活躍を促進するため、より踏み込んだ方策を打ち出すべきとの提案をいたしました。
 これに対し、都は、仕事と家庭を両立させながら働こうとする女性向けの専用相談窓口を、来年度、しごとセンターに開設することを明らかにしましたが、窓口の体制は具体的にどのようなものなのかをお伺いしたいと思います。

○矢田部雇用就業部長

 出産等で退職した女性の再就職を支援するためには、育児をしながら就職活動ができるように十分配慮することが必要でございます。
 このため、都が来年度、東京しごとセンターに設置する専用相談窓口では、カウンセリングや家庭生活と両立しやすい仕事の紹介といった就職支援に加え、区市町村等の関係機関と連携し、子育て支援のサービスに関する情報についてもワンストップで提供いたします。
 また、しごとセンターで以前より提供しています託児サービスに加え、新たな窓口では子供が遊べるキッズコーナーを設けるなど、子供連れの女性が安心して来所し、相談等のサービスが受けられる環境を整備いたします。
 こうした対応により、子育て中の女性の就職活動を的確にサポートしてまいります。

〇菅野委員

 ぜひともしっかりとした窓口の体制をつくっていただいて、女性の再就職を積極的にサポートしてもらいたいと思っております。

5.身近な地域における女性の再就職支援の具体的なとりくみについて

〇菅野委員

 都は、しごとセンターにおける支援のほかにも、都内の各地域で女性向けの再就職支援セミナーを実施しています。再就職を希望している子育て中の女性が、気軽に、無理なく、身近な地域でもセミナーが受講できることは重要と考えます。
 さきの本会議において、都からは、こうした身近な地域における支援を充実するとの答弁がありましたが、来年度の具体的な取り組み内容をお伺いしたいと思います。

○矢田部雇用就業部長

 子供がいるために活動できる範囲等に制約がある女性の再就職を促進するためには、身近な地域で就職支援のサービスを提供することが重要でございます。
 このため都は、都内各地域で地元の自治体と連携して、就職活動のノウハウを提供する女性再就職支援セミナーについて、今年度の九回、合計三百九十名規模から、来年度は十一回、合計五百五十名規模に拡大して実施いたします。
 また、女性の再就職に向け、講義と職場体験を組み合わせ、飯田橋と国分寺の二カ所で実施しています女性再就職サポートプログラムにつきましては、従来の取り組みに加え、利便性の高い主要駅周辺等において、六回、合計百五十名規模で開催する地域型再就職サポートプログラムを新たに行います。
 今後とも、子育て中の女性に向けて、身近な地域における支援メニューの充実を図り、女性の再就職を促進してまいります。

〇菅野委員

 女性の潜在力を引き出し、その活躍を促進することは重要であります。今後とも、働くことを希望している子育て中の女性に対して、個々のニーズに応じたきめ細かい支援を行い、就職につなげていただくことを要望しておきます。

■ロケーションツーリズムを活用した、地域の観光振興について

1.映画やテレビドラマなどのロケ地を活用した観光振興(いわゆる「聖地巡礼」)について

〇菅野委員

 最後に、ロケーションツーリズムを活用した、地域の観光振興についてお伺いいたします。
 旅行者を呼び込む上で注目すべきは、映画やテレビドラマなどの映像の発信力だと思います。この映像の力を活用して、伝統、文化、食、サブカルチャー、そして多摩や島しょの自然など、東京のさまざまな地域の魅力をPRすることも、観光振興の一つの方法ではないでしょうか。
 東京には映画会社やテレビ局、ドラマの制作会社などが数多く集まっており、都内では盛んにロケが行われています。
 昨年公開されたハリウッド映画「ウルヴァリンSAMURAI」では、日本でロケが行われたことが話題になりました。私の地元、港区の増上寺でも大規模な撮影が行われ、世界の人々にその映像が届いたものと思います。
 こうしたロケ地を目当てに旅行を楽しむ人々も少なくないと聞いています。昨年ヒットしたNHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」のロケ地の観光客数は倍増となり、その経済効果は三十二億円もあったということです。
 そこで、映画やテレビドラマなどの映像をもっと活用して、地域に旅行者をもっと呼び込んでいくべきと考えますが、都の所見をお伺いしたいと思います。

○杉崎観光部長

 映画やテレビドラマの舞台となるロケ地は、多くの旅行者が足を運ぶきっかけとなる重要な観光資源でございます。
 このため都は、ロケ撮影に必要な情報提供や関係機関との調整を行うなど、撮影が円滑に進むよう支援することにより、ロケ撮影の積極的な誘致に取り組んでおります。
 また、ロケ地めぐりの魅力を多くの旅行者に伝えるため、来年度は、都内のロケ地情報やその周辺の観光情報をスマートフォンなどの携帯情報端末によって手軽に入手できるアプリケーションを新たに開発することで、発信力を高めてまいります。
 こうした取り組みを通じて、ロケ地を拠点とした都内観光を振興し、地域への旅行者誘致を図ってまいります。

〇菅野委員

 ただいまのご答弁からも、都がこれまでもロケ撮影の積極的な誘致に取り組んできたことがわかりました。
 そこで、そうしたロケ地を重要な観光資産と位置づけて、さまざまな手法により、国内外に広くその情報を発信していただいて、映画や人気ドラマで見たあの場所に行ってみたい、また、あのすてきな店で主人公のようにおしゃれに過ごしたいなどと憧れている人たちをもっと集めるというか、もっとこの東京に訪れていただけるように取り組んでいただければと思います。
 昔、私が子供のころというか、小中学校のころは、フランス映画とかも結構盛んだったんですが、そのころの映画を見て、結構フランスとかパリの町に憧れたりしたこともありますし、昔でいうと「ローマの休日」なんていうのを見まして、ローマに旅行した人は、真実の口なんかに手を入れたり、スペイン広場でジェラートを買ったり、まねをしたような記憶もあるのかもしれませんが、何か東京を舞台にした、そういった名所をもっともっと主人公にしたような映画なんか、ドラマなんかももっとできるといいなというふうに感じている次第でありますが、これからもっと地域や商店街、企業やさまざまな団体とも連携して、どうぞこの取り組みを一層進めていただくことを要望して、私の質問といたします。


【都議会リポート】

https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/economic-port-and-harbor/2014-04.html