平成25年 経済・港湾委員会(9月27日)

経済・港湾委員会
平成二十五年九月二十七日(金曜日)
第八委員会室

平成25年9月27日、経済・港湾委員会にて、産業技術研究センターの支援内容、海外規格、海外進出への支援のとりくみ、中小企業に対しての今後の課題等について質問いたしました。


■産業技術研究センターの平成二十四年度業務実績評価について

1.産業技術研究センターがこれまで実施した支援の内容

〇菅野委員

 都議会の委員会における最初の質問になりますので、よろしくお願いいたします。
 今回は産業技術研究センターの平成二十四年度業務実績評価についてお伺いをしたいと思います。
 安倍政権、政府・自民党の経済政策により、月例経済報告でも景気判断が上方修正され、日本経済に明るい兆しが見えてきました。この時期を逸することなく、都内経済の成長を確かなものにするためには、東京の産業の土台を支えるものづくり中小企業が新製品の開発や新分野への参入などを積極的に行えるよう、行政がしっかりとした支援を展開していくことが大切だと思います。
 さきの本会議においても、我が党は、設備投資の活性化策や新たな事業展開を図る際の支援策が今後より一層必要となることを訴えました。そのためには、資金面や経営面での支援だけではなく、技術面での支援が重要であることはいうまでもありません。都内中小企業の技術支援の拠点である産業技術研究センターにおいても、成長を目指す中小企業への支援を強化していくべきと考えています。
 中小企業にとって、付加価値の高い製品をつくり、その品質や安全性を高めていくためには、高性能な加工機械や試験機器の活用が不可欠であります。しかし、すぐれた技術を持ちながらも、経営基盤が弱く、自社ではそうした機器を保有できない中小企業にとっては、低廉な価格で技術サービスを提供する産業技術研究センターは、これからますます重要な役割を担っていくものと思います。
 評価委員会での報告書を見ますと、平成二十四年度は、技術相談、そして依頼試験、機器の利用で過去最高の実績を上げたことが高く評価されていますが、とりわけ、成長を見据えて積極的な事業展開を図ろうとする中小企業に対して、産業技術研究センターがこれまで実施した支援の内容について、まずお伺いをしたいと思います。

○十河商工部長

 産業技術研究センターでは、多摩テクノプラザの開設や青海への本部移転を契機といたしまして、製品開発や性能評価のための最新鋭の機器を大幅に拡充いたしますとともに、環境などの都市課題の解決につながる技術分野の相談にも積極的に対応するなど、中小企業の新たな事業展開を支援してまいりました。
 こうした取り組みの中、昨年度は、本部に3Dプリンターを増設し、付加価値の高い製品づくりへの支援を強化いたしました。
 また、海外の製品規格などに関する情報提供や技術支援を総合的にサポートするなど、海外展開を目指す中小企業に対する支援の充実を図っております。
 さらには、バイオ技術の応用など、今後の成長が期待される分野について重点的に研究に取り組み、その成果の積極的な活用を通して、中小企業の新分野への展開を支援しております。
 産業技術研究センターでは、こうした取り組みを多面的に展開し、成長を目指す中小企業を技術面から後押ししております。

2.3Dプリンター用いた中小企業の製品開発の取り組みの具体例

〇菅野委員

 さまざまな支援策を行っているというお話でございましたけれども、中小企業の積極的な事業展開への支援について、さらに詳しくお伺いしたいと思います。
 まず、我が党の吉原幹事長の代表質問に対し、知事からの答弁にもありました、先ほど3Dプリンター、高速造型機というんでしょうか、はこれまでに比べ、はるかに短期間、かつ低コストで試作品等の製造が可能なことから、現在大きな注目を集めております。
 先日、私も産業技術研究センターの本部を視察した際に、実際にその機械を見させていただきましたが、本部に設置されているものは極めて微細な寸法での加工が可能な高い性能を持っていました。今後、この機械を活用した企業の製品開発がますます活発になるのではないかと期待をしているところであります。
 そこで、産業技術研究センターでは、この3Dプリンターを中小企業の製品開発にどのように役立ててきたのか、これまでの取り組みの具体例を何か、成果もありましたらお伺いしたいと思います。

○十河商工部長

 樹脂や金属粉末をレーザーなどで固めて立体物をつくる3Dプリンターは、試作品などを製作する上で、従来の加工方法に比べ費用と期間を大幅に削減し、複雑な形状の製品も容易に開発できることから、産業技術研究センターでは3Dプリンターを活用した製品づくりの支援にいち早く取り組んでまいりました。
 これまでも自然に近いやわらかな風を生み出す高機能扇風機や、折り畳みが可能な防災用ヘルメットの開発などを支援しております。
 平成二十四年度は、高機能扇風機の技術を応用した循環機能の高い空気清浄機の開発を初め、一万点を超える部品や製品の試作に対応いたしました。

3.海外規格、海外進出への支援に関して、産業技術研究センターのとりくみを伺う

〇菅野委員

 今ご答弁にありました高機能扇風機、これは実際、私も見させていただきましたけれども、これもプロペラの形が本当に、まさに技術の結晶というか、その羽の形状で非常に静かな、音が出ない扇風機ができたということですけど、こういったものをつくるのも、やはり幾つもの試作を経てできたというふうに感じています。
 その試作をつくるに当たっても、従来であれば高い金型で加工しなきゃならないものが、この3Dプリンターで幾つもの試作品ができる。実際にでき上がったものを見させてもらいましたけれども、本当に結構強度もあってかたいもの、やわらかい材質でできるものも、機械もあるということを伺いましたけれども、そういった製品ができるということで、サンプルとはいえ、実際の製品に近いような形でできるようですから、本当にそういったものがこれからの製品開発、まさにこういったいい機械を生み出す結果につながったのかなと非常に感じております。
 先ほどの折り畳みヘルメットも、私の港区でも各学校に設置するなど、先に品物だけ、前に見たことがあるんですが、これがこういう過程でつくられていたのかというのも改めて感じた次第です。
 こうした品物の開発、そして、こういった海外でも販売、非常に評価を得ているような製品のように、これは知事答弁にもありましたけれども、中小企業のさらなる成長のためには、やはり国内だけではなくて、これから海外の需要をどんどん取り込むこと、これがやはり日本の中小企業にとっても大事なことだと思います。
 しかし、中小企業自身が自社製品を海外で展開しようというときには、輸出先の国だとか地域、それぞれ製品に対して課しているいろんな規制があったり、そういった規格があったりします。こういった技術的要件をなかなかクリアできないというのもあるとも聞いておりますので、先ほどのご答弁の中でも、海外規格の問題に触れていらっしゃいましたけれども、ぜひこの海外規格、海外進出への支援は不可欠と思いますけれども、産業技術研究センターではこれに対してどのように取り組んでいるのか、お伺いしたいと思います。

○十河商工部長

 新たな成長を目指して積極的な海外展開を図る中小企業に対しまして、国や地域ごとの課題に対応した的確な支援を行うことが重要でございます。
 特に海外で製品を流通させるためには、諸外国の基準や規格に適合する必要がありますが、中小企業にはそのための情報やノウハウが不足しており、これに対する支援は不可欠でございます。
 このため産業技術研究センターは、昨年十月、青海本部内に東京、神奈川、千葉、埼玉、長野の一都四県の公設試験研究機関の共同運営によります広域首都圏輸出製品技術支援センターを開設いたしました。
 同センターでは、海外の規格を電子データや冊子で閲覧できるサービスの提供や、規格に詳しい企業OBなどの専門相談員によるきめ細かな相談対応を実施しております。また、相談内容に応じまして、当該分野に精通した他県の専門相談員がテレビ会議システムにより対応するなど、広域的な連携を生かした支援を行っております。
 具体的な成果といたしましては、例えばEUで定める製品の安全規格でありますCEマークに適合させるための助言など、開設後半年で三百件以上の相談実績を上げております。
 なお、同センターは本年四月より一都八県に連携を拡大しておりまして、中小企業の海外への事業展開に対し、技術面からの後押しをさらに強化しているところでございます。

4.中小企業が抱える技術的課題について産業技術研究センターがどのような運営方針でとりくんでいくか伺う。

〇菅野委員

 今ご答弁にもありましたが、今後、海外進出へのさまざまな支援とあわせて、産業技術研究センターの支援で、成長分野への参入に挑戦する中小企業がまたふえてくると思いますけれども、一方で、こうした分野は技術革新のスピードが非常に速くて、市場競争も激しくて、中小企業が抱える技術的課題は、より複雑高度化していくものと私も考えています。
 これらの課題に的確に応えていくためには、質の高いサービスをさらに提供していく必要があると思いますけれども、産業技術研究センターではどのような運営方針で取り組んでいくのか、お伺いしたいと思います。

○十河商工部長

 3Dプリンターの目覚ましい普及に見られますように、ものづくりを取り巻く状況が急速に変化する中、産業技術研究センターが都内中小企業の複雑で高度な技術課題に的確に対応するためには、組織、人材育成、財務など、業務運営の面で不断に見直しを行い、技術支援の質を高めていくことが重要であります。
 そのため、産業技術研究センターでは、機動性を発揮できる地方独立行政法人のメリットを生かし、社会経済状況や企業の技術課題の変化に柔軟に対応した組織体制の整備を行っております。
 また、人材育成の面では、研究員の能力向上に向け、メカトロニクスなど今後の成長が期待される四つの分野に重点を据えた独自の基盤研究を進めますとともに、学会や他の公設試験研究機関の研究成果発表会に研究員を積極的に参加させることで、最新の専門的知見が取得できるよう努めております。
 さらに、質の高い研究を幅広く進めていくための資金を確保するために、外部資金の獲得に積極的に取り組んでおります。
 産業技術研究センターでは、このような取り組みを一層推進していくことにより、中小企業のニーズに応える質の高いサービスの実現を目指していくこととしております。

〇菅野委員

 実は私も、例えば、港区なんですが、港区はすぐこのセンターとは隣接した地域ですので、比較的近い地域にあります。昔からのものづくり産業とか、さまざまな中小企業の本社等もたくさんありまして、多分このセンターとのかかわりはかなり深いものかなというふうに感じて、いろいろ、先日もそうしたものづくりの会というか、産業関係の団体の会にちょっとお邪魔したときに、いろんな方とこうしたセンターを利用したことがあるかどうかとか、そういったお話をちょっと伺ったことがあります。
 その中で、やはり何人かから実際に利用したという声がありまして、その中では、例えば専用転写プリンターは、従来は機器を保有している専門業者をわざわざ探して、高い料金で時間をかけて、期間をかけてプリントしていたけれども、産業技術研究センターが格安で機械を貸与してくれて、プリントもその日のうちに完了する、大変ありがたいんだというようなこと。また、そのほか、多様な機器を取りそろえていて頼りになる。今後、繊維の消臭効果テストの実施や、洗濯による消臭効果の軽減状況が数値として把握できる機器を利用したいとか、具体的な話になりますけど。あとは、海外に進出したいんだけれども、国別のサイズデータなどのそうしたアドバイスが欲しいとか、そういったような具体的なお話もいただきまして、利用した方からはおおむね大変高い期待を持って、ほかにも何人もありましたけれども、声がありました。
 一方で、ただ区の、例えばお膝元である区の中の窓口がまだまだ、せっかくこれだけのいいセンターなのに、それほどPRが大きくはなくて、区で行っている新製品新技術開発支援事業というのがあって、それの補助対象事業に対して、いろいろとご協力をいただいているというような関係な感じで伺った点がまだもう一歩、地元自治体の協力が必要なのかなということを感じました。
 最後に、やはり我が国のものづくりの復権に向け、この産業技術研究センターは、私も見た範囲の中で判断するだけではありませんけれども、本当に重要な役割を担っているものと思っています。
 区部と多摩、それぞれの拠点において、都内全域にわたり地域の特性を踏まえた積極的な支援を展開するとともに、今申し上げましたが、地域の自治体や支援機関との連携をより強めていただいて、さらに多くの中小企業の期待に応えていただくことを期待いたしまして、私の質問といたします。


【都議会リポート】

https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/economic-port-and-harbor/2013-09.html